【絵が】2021年10月の学習内容と11月の目標【上手くなる】
5月から人体を描けるようになりたくて勉強と練習を続け、10月末で6ヶ月経ちました。
6ヶ月といえば半年、1年の半分にわたり絵に真剣に向き合ってきたことになります。
その成果を見る前に、10月はどんなことを学習し、考えたかを振り返ってみたいと思います。
10月にやったこと
前回ブログの最後に「10月の目標」を掲げていました。
それがどのくらい達成できたか検証します。
*****
日差しや風の爽やかさに秋の訪れを感じ始めた10月初旬。
とりあえず先月同様クロッキーと清書をやろうと思ってはいたものの、さすがに今まで使ってきたポーズ集はだいたい一回描いてしまったので飽きがきていました(秋なだけに)
2ヶ月間使い倒したポーズ集
何か他のポーズ集はないか探して見つけたのがこちら。
私がなんの目的で人体の描画練習をしているかというと
漫画を描くため
です。
その経緯はこのときガッツリ書きました。
1つのことに夢中になって視野が狭くなり本来の目的を見失ってしまうのが一点集中型の私の弱いところであり、特性でもあります。
最近は漫画のためというよりこの基礎練習が楽しくなってしまっています。
手段のはずが目的になっている…と感じたので、漫画へのモチベーションを取り戻すべく漫画家の方が作られたポーズ集を選びました。
東村アキコ先生は筆が早いことで有名な漫画家です。
昔「ママはテンパリスト」をとにかく面白く読んだ記憶があり、「海月姫」や「主に泣いてます」なども読んでいました。
ごっちゃんももう高校生くらいか…
最近はあまり読んでいなかったので、このポーズ集を手に入れたことを機に「偽装不倫」をLINE漫画で読んでみました。
先生は描きたいストーリーが一番にあって、それを表現するのに必要な絵を効率よく描かれる作家なんだなーと改めて感じました。
セリフやストーリーの流れがすんばらしく流麗で煌めいていて、先生が何を描きたいのか、何に重きを置いているのかがビシビシ伝わってきて感動しました。
スマホで読みやすい縦読み漫画はコマとコマの間が冗長になりがちであまり好きではありませんでしたが「偽装不倫」はその違和感を一切感じさせず、マジで百戦錬磨のプロってスゲーなと思いました。
先生にとって絵は描きたいものを表現する手段であり、本来漫画ってそういうものだよなーと改めて考えました。
私が表現したいものは「BUCK-TICKというバンドの素晴らしさ」であることは変わりなく、そのための手段として人体の勉強を始めたはずなのにこの半年間1ページも漫画は描いていません。
本末転倒本末転倒本末転倒
の文字が頭の中で激しく点滅し、めまいと動悸が襲ってきます。
先生はこのポーズ集の中で一貫して
「人体が描けないなら誰かにポーズとってもらって写真撮って、それを模写なりトレースなりすればいいんだよ〜」
とおっしゃっています。
oh…
私は先月のブログ記事で
「描けないならどんなポーズでも全部写真見て描けばいいじゃん」
と言われたりもしますが、
「写真見ても描けないから勉強してんだよ!」
とその都度心の中で叫んでしまいます。
【絵が】2021年9月の学習内容と10月の目標【上手くなる】 - スナックみどり【はてな店】
とキレ気味に書くほど「写真を見ても描けない」人の場合はどうしたらいいでしょうか?
正確に言うなら「写真見れば描けないこともないけど、それでもすごく時間がかかるし、簡単なポーズでも写真見ないと描けないからどんなポーズも写真見ないと描けないと思うと気が狂いそうになる」んです。
そしてトレースすると他のコマとの画力が違いすぎてチグハグになってしまうのはどうしたらいいでしょうか?
理想に対する現実の自分に、圧倒的力不足という大きな闇が精神攻撃を仕掛けてきます。
やめてくれ!
私のHPゲージが赤く点滅しています。(瀕死)
さらに先生はこうもおっしゃいます。
「骨とか筋肉とか見えないものまで考えて描いたことない!見える輪郭だけ追って描けばいいんだよ〜それが速描きのコツ!そうやって描いてれば簡単なポーズなら見ないで描けるようになるよ!」
†┏┛墓┗┓†
山咲みどり
ここに眠る
ここ数ヶ月骨や筋肉について勉強してきた私って一体…と、ちびまる子ちゃんのように顔に縦線が入ったまま永眠しそうになりました。
見える輪郭だけ追ってサラサラっと描けたらどんなにいいか…
先生は美大を卒業されており、そこに入学するにあたっても在学中も相当絵の訓練はされてきた方です。
だからこそ輪郭だけ追って描けるんだと思います。
そもそも私とは実力も、練習量も違うんです。
よそはよそ うちはうち
みどりはいきかえった!
私が時間をかけて骨や筋肉の勉強をしてきたこと自体は間違っていなかったと思っています。
人にはそれぞれ適したやり方があって、私はそこから納得しないと描けないタイプの人間だから仕方ないんです。
棺桶に片足を突っ込んでもすぐに蘇る、殺しても死なないゾンビのような強い心を身につけた事がこの半年間の勉強の成果でもあります。
よーし、東村メソッドを取り入れてまた前進するぞー!と思いながら、ふと気になったのが「トレースすればいいよ!」というお言葉。
トレース、トレス(trace)とは
絵画の分野に置いて資料の上に別の紙を置いて透かし、それをなぞって写し取る行為をトレースと呼ぶ事もある。絵画分野において技術向上の為に行われる模写(reproduce)とは基本的に異なり、概念としては印刷などによる転写(copy)に近い。
(wikipediaより)
絵の勉強においてトーレスなんて意味あるか?と思っていたのでやったことはありませんでした。
東村先生は漫画を描くときに自分で撮った写真をトレースしろとおっしゃっているだけで、トレースして絵を練習しろとはおっしゃっていません。
そんなことしていたら「いつまで練習してんだよ!早く漫画描け!」とぶん殴られていると思います。
幸い私は先生のアシスタントではないので自分の納得いくまで練習します。
奇遇にも先生の本と同時期に読んだ本格的なデッサンの本にも「デッサンするときトレースもしてみたらええでー」的なことが書かれていたので試しにやってみることにしました。
本格的絵画に寄りすぎていて私にはオーバースペックだった本。
それらを踏まえて描いた絵がこちら。
左から模写、トレース、その二つを経ての修正です。
模写でもそれなりに見えるといえば見えても、なーんか違和感あるわけです。
それがどこかわかんないなーなと思っていた答えがトレースすると一発でわかる事に驚きました。
あと、トレースした画が「闇金ウシジマくん」等の真鍋昌平先生の漫画に出てくる人っぽくて、今読んでいる最中なのもあり、楽しくなってモチベーションが上がりました。
顔の角度がうまく描けねー!!と思って集中的に練習したりもしました。
顔のパースがあっていないとお面貼り付けたみたいになって、それを修正するのが難しく、直すくらいなら最初から書き直した方が早いことにも気づきました。
何気なくウマ娘に出てくるセイウンスカイを描いたついでに、東村先生のポーズ集を参考に他のウマ娘も描いてみました。
どこかに電話するヒシアマゾン
ポーズ集ってそのまま模写するんじゃなくて、自分の描きたいキャラにそのポーズ取らせるためのものだよなぁ…という当たり前のことを改めて理解しました。
そして今までしつこく人体について考えてきて、ここにきてようやく「結局漫画で一番描くのって登場人物の顔で、体も大事だけど、顔はもっと大事だな」とも感じましたし、人の顔は体よりたくさん描いてきたはずなのに結局描けてない、主に顔のパースと体のパースを合わせる練習が足りていないと感じたので、11月は顔を重点的に練習しようと思います。
なぜ顔と体のパースが合わないかというと、全体の構図を深く考えずに適当に描き始めるからです。
そして途中で違和感を感じ、細部を直し始めます。
目の角度がおかしいのかな?あれ、口とも合ってないぞ?ん?顔全体が曲がってるのか?え、頭の角度からして違うくね?みたいになってくるわけです。
短絡的思考に起因する行動力と全体より細部を気にする性格があいまってお面顔ができあがるんですねー
実際こんな簡単な図形みたいなキャラですら、顔と体のパースが合わずかなり描き直していました。
中途半端な衣替えであり合わせの服を着ていたら夫に「無課金ユーザー」と揶揄された今日の服装。 pic.twitter.com/lehqfPiFr0
— 山咲みどり (@tokumorimix) 2021年10月30日
この全体を見ない、とっ散らかったチグハグさが私の本質なのかもしれません。
10月後半にはBUCK-TICKの今井寿さんのお誕生日がありましたので、お祝いのイラストを、これまでの練習のアウトプットとして描いてみました。
10月21日はBUCK-TICK今井寿さんのお誕生日でした!おめでとうございました!!!ずっと描いてみたかったジョジョ風に手間取り完全に遅れました。1日も早く怪我が完治されますことを心から願っております🙏#今井寿誕生祭2021 pic.twitter.com/3QrgCM6oLW
— 山咲みどり (@tokumorimix) 2021年10月23日
最初は今井さんの写真をネットで検索して出てきた昔の写真をそのままジョジョ風にアレンジしてみ描いてみよ〜と気楽な気持ちで描き始めました。
仕上がる頃になってふと、最新配信ライブの衣装や髪型にしないと、今の今井さんの格好良さを表現できなくね?と気づき全面的に描き直したせいで時間がかかってお誕生日を過ぎてしまった上に、色を塗る気力が残っておらず、漫画風で…という言い訳に基づいて白黒で投稿しました。
ここでも「深く考えずにやり始めて途中で違和感に気づき、全面的に直して時間がかかり、完成度が下がる」といういつものパターンを遺憾なく発揮しています。
さらに、最初はほぼ模写で済まそうとしていたことは、かなり何かを作る者としての意識が低くなっていたなと感じました。
模写は結局右から左に移すだけなわけで、それにももちろん技術が必要だから模写が上手いというのもすごいことです。
けれど、私の本来の目的はなんなのか。
自分がいいと思うもの、面白いと思うことを表に出すことではないのか。
今回の絵は全身上から下まで他人のふんどしを身に纏いまくってのことであるにも関わらず、できる工夫すらも怠ろうとしたことが「意識低っ!!」と思わざるを得ませんでした。
そういうことに気づかせてくれるBUCK-TICKという存在に出会えたことが私の人生をどれだけ豊かにし、前進させていることでしょう。
感謝してもしきれないので全身全霊で応援していく所存であります。
*****
11月の目標
10月頭に立てた目標はかなりクリアできたように思います。
クロッキーと清書はあまり枚数できなかったけれど、他のことでたくさんの気づきがあり、思っていたより前進しているかもしれないと、振り返ってみると思うことができます。
ネットでなんでもわかる世の中でもありますが、私は結構本を読むことで得られる知識から新たな視点や考え方を得られることが多いことにも気づきました。
これからも月に何冊かは絵の参考になりそうな本を読んでいきたいです。
というわけで11月の目標をまとめると
- 顔と体のパースを合わせられるよう練習します。
- 「何を描きたいのか」を深く考えてから描き始めます。
- 引き続き、絵の勉強の参考になりそうな本を探して読みます。
- 月の後半にはアウトプットとなり得る創作物を作ります。
ここ数ヶ月全く漫画を描いていないので、1ページでもいいから漫画を描きたいです。
この半年の集大成!などと気負い出すと逆に気が滅入るので気楽な気持ちで描きたいです。
なんだかいろんなことをすっごく遠回りしてやっているような気がしてなりません。
とはいえ、焦っても結局できないものはできないし、何らかの形でできないところを潰していくしか先に進む道がわかりません。
そういう不器用な性分なので仕方ないと割り切って粘り強くやっていきます。
この半年間の成果といえば
自分の特性を理解し受け入れて、人の良いところは取り入れながら、自分の納得できるやり方で諦めずに続けていく
ことができるようになったことだと思います。
このやり方が正解かどうかはわかりません。
このまま花も咲かず実も成らず朽ち果てていくだけかもしれません。
それでも「やりたかったことはやってやったぜ」と思えない人生なんてクソ食らえなのでやってみたいと思います。
それではまた来月。
【絵が】2021年9月の学習内容と10月の目標【上手くなる】
9月初旬に「人体が描けるようになりたくて4ヶ月間勉強した話」全6話を書いた時に「PDCAをぶん回している」と言われました。
PDCA…
一時期よく見た気がする。
なんだっけ?
PTSDは心的外傷後ストレス障害だしな…
と思って調べてみたところ
PDCAとは
Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようという概念。
だそうで。
5月から8月末の4ヶ月間やったことを振り返ってみると
- これやってみよう(Plan)
- やる(Do)
- どんな成果が出たか検証する(Check)
- つまづいたところ、改善点を見つける(Action)
- 改善方法を考える(Plan)
- やる(Do)
ずっとこの繰り返しで、意図せずしてPDCAサイクル回してた。
なるほど、ビジネスでも使われる手法なのかと納得したので9月の振り返りと10月の目標を立てることでさらにPDCAを回していこうと思います。
9月にやったこと
9月も引き続きクロッキーとその清書をやっていました。
クロッキーした絵を全部清書するのはだるいので、クロッキーした時にバランスが取りづらかった、わからないところがあった、何が違うのかわからないけどなんかおかしいと思ったなど、とりわけ違和感が大きかったもの選んで何が違和感の原因か考えながら描いています。
これを描いた時には骨盤周辺と前に出ている足の角度が気になっていて、そこも確かにわからなかったんですが、描いてみると異様に手を描くのに時間がかかったことがストレスだったので、手を重点的に練習してみました。
手は指がそれぞれいろんな方向を向いていたり、見える面が違ったりしていつも迷うので、それぞれの指の向きや見える面を意識しながら描きました。
あと、腕との繋がりです。
手の向きによって腕の角度も変わって見える面と筋肉が違うのでそこも意識して模写しました。
クロッキーで全体の形を取ったあと、いざ清書してみると顔や手足の細かいところでつまずいて時間がかかっているとも感じたので、顔の練習もしました。
いつも「唇の奥行きが上手く描けねーなー」「目のと顔のパース揃えるの難しいな」と思っていたのでそこを考えながら練習しました。
そうこうしているうちに楽しみにしていたBUCK-TICKの全国ツアーが全て中止になってしまいました。
9月のファンクラブ限定ライブは中止、そのあと始まる全国ツアーの一部の公演は延期、今井さんの怪我が治って復帰できるであろう日程以降の公演はそのまま据え置きというのは8月に決まっていました。
それが9月に入って加療とリハビリに前回の見積もり以上の時間が必要とのことで全国ツアー自体が全て中止になって払い戻しされることになりました。
私がチケットを確保していた11月の公演は開催される予定でしたし、呑気に構えていただけに全公演中止の一報を聞いて心にポッカリ穴が空いてしまいました。
その心の穴を埋めるかのように櫻井さんや今井さんの写真を模写したりもしました。
手と顔を勉強したのでそのアウトプットも兼ねて。
骨格や筋肉を勉強し、人体の立体が意識できるようになってから似顔絵を描いた時違和感を修正するのが楽になりました。
本当は今井さんがライブで見せるクネクネし…華麗なステップを一枚絵にしたかったのですが、どーーーーーーしてもあの動きを絵で再現することができず「何がわからなくて描けないんだ????」と三日三晩ほど悩みながら模写したり「腰か?描けない原因は腰か?」などと思い勉強したりもしました。
結局今井さんは描けず、思いつめ、混乱した私は
「対面から發をポンする櫻井さん」を描きました。
もう、何が何だか自分でもよくわかりません。
勉強してたらいつか描けるようになるでしょうか?
いつか霧が晴れるように「これだ!」と思う絵が描けるでしょうか?
やっていけばいつか描けるようになるかもしれませんが、やらなければ100%描けないと思うので
いつか今井さんのライブでの動きを絵で表現する
というのを大きな目標として掲げ、正気を保って前進していきたいと思います。
さらにアウトプットとして模写以外の創作絵でも一発描いたろかいな、と思い俯瞰の人体を適当に描いてみたところ、これまたびっくりするほど描けなかったのでポーズ集から俯瞰の写真を探して描き漁りました。
描いていて肩の関節がわかってないことがわかったので、そこを重点的に調べながら清書しました。
「肩の関節がわかっていないことがわかった」と書きましたが、肩の関節がわかっていないことは一番左の絵を描いた8月頭の時点でわかっていました。
なんかちょっとめんどくさかったというか、他にわからないことが多すぎて今度やろうと思って放置していました。
放置しておいたところが自然にできるようになったことは今まで一回もありませんでしたので、今回もやっぱりできないか…と思いました。
今回はいい機会だと思ったので重点的にやっておきました。
具体的には三日くらい考えていたと思います。
たまたま1ヶ月半ほど前に同じモチーフを描いていたので並べてみたら、いろいろ変わったなと感じました。
少しづつですが、全体的に精度が上がってきていると思えました。
「描けないならどんなポーズでも全部写真見て描けばいいじゃん」
と言われたりもしますが、
「写真見ても描けないから勉強してんだよ!」
とその都度心の中で叫んでしまいます。
8月の絵も、もちろん写真見て描いてるんですよ。
これで描けている、これでいいという人はそれでいいと思います。
私は写真を見て描いてこのレベルでは嫌だというだけで、完全に自己満足です。
ジョジョの奇妙な冒険part7 スティール・ボール・ランのジャイロも言ってるじゃないですか。
「納得は全てに優先するぜッ!」
って。
私は自分が納得できないのは嫌だから、納得したいからやっているだけのことです。
10月の目標
- 9月に引き続き、クロッキーと清書で弱点の発見と改善を目指します。
- 9月は一冊も本を読まなかったので、今月は参考になりそうな本を探して読みます。
- その結果、やってみたい勉強法が見つかれば試してみます。
- クロッキーと清書に使っていたポーズ集も一周回って飽きてきたので新しいのを探します。
- 練習ばかりで何のための練習か目的を見失いつつあるのでアウトプットとなり得る一枚絵や漫画を模索します。
なんだか政党のパンフレットに書いてありそうな感じになってしまいました。
「消費税減税を実現します!」みたいな。
個人がやるとちょっと怖いですね。
今月やれればいいですけど、やれなかったらやれなかったで、なぜやれなかったかをまた考えていきたいと思います。
それではまた来月。
今週のお題「今月の目標」
だったので、そこにも一応参加しておきます。
人体を描けるようになりたくて4ヶ月間勉強した話(6)
戦没者の次はいにしえの芸術家たちと交信を始めた私のこれまではこちら。
人体描写の勉強をしようと思ったきっかけ
勉強を始める前に自分の実力を確認した話
1〜2ヶ月目の学習内容
3ヶ月目でカラー創作絵を描いた話
4ヶ月目にクロッキーと人体模写をしまくった話
人体描写学習は4ヶ月目にしてさらに勢いづき、猪突猛進、獣の呼吸で新しい練習方法を試して2週間が過ぎたころ、急に描けなくなってしまいます。
草花で埋め尽くされた草原で爽やかな風に吹かれたのは幻覚か、それとも冥土の入り口か。
そしていよいよ4ヶ月間の成果が明らかに。
1ヶ月経たずに訪れた壁
クロッキーと清書の反復練習を始めて2週間くらいは「これは伸びる!」という確信を持ってバリバリ取り組み、実際に点でしかなかった知識が線になって繋がる感覚があり、やりがいを感じていました。
それが3週間目に差し掛かる頃「ん?」となりました。
最初は全くできなかったことが徐々にできるようになっていた感覚があったのに、今度はできないことが気になり始めました。
「この角度の体だと、奥行きが捉えられなくて描けない」
「腰の角度と足の付け根がどうなっているのかわからなくて描けない」
「えー、全然できないこと、わからないことばっかりじゃん!」
描き続けていれば最初は1時間以上かかっていた清書が30分くらいでできるようになるんじゃないか、1ヶ月もやればどんなポーズでも資料見ずに描けるようになるんじゃないかと夢見ていたのに、全くタイムは縮まらず、それどころかさらに時間がかかるようになってしまいました。
「やっぱりできない。わからない。私は頭が悪くて能力の低い人間なんだ。だからできるようにはならない」
そうやって落ち込み、やれ腰が痛い、頭が痛いと言って布団にダイブ、ゲームを起動する一連の流れ。
いっっっっっっっつもそう。
ちょっとつまづくとすぐ「自分の能力が低いから」「才能がないから」「頭が悪いから」と自分を卑下して逃げようとする。
しかしこれ、能力の低い自分を肯定しているようでいるようでいて、実は自分の能力を高く見積もっているんです。
「自分は能力が高く、ちょっとやればすぐできる」と心のどこかで思っている、もしくはそうありたいと思っているのに、やってみたらできない。
だから「自分は能力が低い」って落ち込むんです。
できないのは「能力が低いから」じゃなくて「知識が足りてないから」なのに、自分の能力のせいにするのはそこを過信、理想化しているからです。
だから最初から言ってるじゃないですか。
ちょっとやったくらいでできることじゃないんだって。
できる人もいるかもだけど、私はそういう人間じゃないんだって。
能力がない、才能がない、頭が悪い、それはそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
ただ、できるようになるまで、理解するまでやってないことだけは確かで、やってないからできないのは当たり前なんです。
いい加減、気づけ。
脳内のミスター都市伝説、関暁夫さんが決め台詞を甘えた私に叩きつけます。
できない時はどうするんでしたっけ?
そうです、やり方を学べばいいのです。
すぐに漫画素材工房さんと「スカルプターのための美術解剖学」を読み返しました。
すると、以前読んだ時は読み飛ばしていたところに解決の糸口がありました。
読み飛ばしていたというか、わかった気になっていた部分が実際は理解できておらず、疑問にぶち当たって初めてその部分を理解できたという感じです。
もう一度曖昧だった部分を模写し直したり、体のパーツそれぞれを立体として捉えられるよう構造線を意識して描いたりしてみました。
するとまた「これは伸びる!」という感覚がありました。
おやおや、またいい気になっていますね?
今度は脳内のフリーザ様が囁いてきます。
おそらく今後はこの「できる(いい気になる)、できない(落ち込む)、資料に戻る(解決)」の繰り返しだと思います。
できることを確認して喜ぶのはいいとしても、できないことを認識したときに落ち込むのは時間の無駄で、むしろ問題点を認識できるほど成長したと思って次の段階に進む1つの目安とするのが精神衛生上良いと思われます。
4ヶ月間の成果とこれから
4ヶ月が経過して、最初に実力を測った時のモチーフをもう一度描いてみようと思った時、とても不安になりました。
「4ヶ月もかけてやってきたのに何も身についていなかったらどうしよう」
「模写ではそれなりに描けるようになったけど、何も資料がなかったらやっぱり描けないんじゃないか」
そんな風に考えてしまい、描くのをためらいました。
でも、そこで止まっていては結局前と同じじゃないですか。
今どのくらい描けるのか。
描けないのはどうしてか。
原因がわかったらもう一度資料に戻る。
そうすればいいだけのことです。
勇気を出して描いてみました。
めちゃ変わっとるやん。
ゼロ地点、1ヶ月後、4ヶ月後で並べてみました。
見たらわかる、違うやつやん!(CV:宮川大輔)
違うポーズも描いてみました。
人が…動いている…
基準となるモチーフを描いてみて
「ここまだよくわかんないな〜」
と思うところはたくさんありました。
でも、以前はまっすぐ立たせる事すらできなかった人体を動かすことができたのはとても嬉しかったです。
ちゃんと前進しとるやん。自分。
ここ最近の一番大きな変化といえば、体の各部位を立体として、どの面がどこを向いているかを捉えられるようになったことです。
以前は輪郭を描いてなんか違う、なんか違うと延々修正していた部分を、最近では立体として考えることで楽に違和感を修正できることに気づきました。
また、そう捉えることで人体に奥行きを出せるようになったり、顔のパーツの配置も以前より違和感少なくできるようになってきました。
今は着衣のモデルを模写しています。
服のシワが体に沿ってできているという当たり前のことが、中の体を勉強することによって割とスムーズに理解できてる感覚があります。
やればやるほど知識が増える感じもありますので、これからもしばらくはクロッキーと清書、そのとき感じた疑問点の解消を繰り返し続けていきたいと思います。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
最初に「誰かのお役に立てれば幸いです」と書きました。
まぁそれは建前というか枕詞というか、誰かのためというよりむしろ自分のためにこの一連の記事を書いたというのが一番かもしれません。
誰かのために書くのなら、もっと簡潔に書けばいいのにこれだけ書きたいことを思いっきり書いて引き伸ばしたのは自己満足以外の何物でもありません。
4ヶ月間頑張ったことを、その時考えたことを文章という形にして残しておきたかったんです。
それでもここで紹介したサイトや本、ツールが誰かのお役に立てたら、私がやってきたこと、勉強しながら考えたこと、感じたことが同じく絵を勉強している方、もっと絵が上手くなりたいと思っている方の力になれたら、そんな嬉しいことはありません。
最後に人体を学習する上で使ってよかったサイト、本などをもう一度ご紹介しておきます。
ちなみに、これらのサイトや本を見るだけでは私の経験上
絶対に絵は上手くなりません。
上手くなる人もいるかもしれませんが、それは一部のスタンド使いとかそういった特殊能力者だけです。
上手くなったような気になるかもしれません。
でもそれは
100%気のせいです。
必ず自分で描いてみてください。
<漫画素材工房さん>
財布の紐がダイヤモンドより硬い私が断言します。課金して損なし。人体の描き方に迷っている人は必ず購読すべし。
<スカルプターのための美術解剖学>
骨と筋肉を勉強したかったらこれ。迷ったらここに戻れ。
<だらっとしたポーズカタログ>
自然なポーズの人体を全身模写するならこれ。モデルも嫌味がなくて良い。部屋の中での写真はもちろん、背景なし1ポーズでアイレベル水平、煽り、俯瞰でそれぞれ正面、斜め、後ろ等、様々な角度からの写真も収録されている。
<Timer Plus>
クロッキーをする時に便利なアプリ。準備時間、ワークアウト時間、休憩時間、セット数が設定できる。普通に筋トレにもいいと思う。
私がBUCK-TICKというバンドが好きな理由の1つに、それまでの良さを失わず、常に新しいことに挑戦し、最高を更新し続けているところが挙げられます。
30年以上音楽活動をしていればヒット曲も多々ありますし、ライブでそれをやっていればお客さんは喜ぶと思います。
でもBUCK-TICKはそうしません。
もちろん定番曲というのはありま…
コロナ禍の中で行われた無観客配信のうち…
…
…
また語り出すと長くなるのでやめます。
とにかく、そういうBUCK-TICKの良いところを見習って、私も常に自分の最高を更新し続けるような人生にしたいです。
新しい漫画や絵が描けたらTwitter(@tokumorimix)やpixiv(山咲みどり)にUPします。
お時間あればこれからの私の地味な成長ぶりを「いい気になってたあの人どうしてるかな。息してるかな」程度の感覚でたまに覗いていただけると幸いです。
おわり
ちなみに「BUCK-TICKの良さを語ると2万字を超える」と第1話でしつこく書きました。
この「人体を描けるようになりたくて4ヶ月勉強した話」全6話合わせて17,000字くらいです。
BUCK-TICKの良さがどれほど多いか、その沼がどれほど深いか、お分りいただけるかと思います。
人体を描けるようになりたくて4ヶ月間勉強した話(5)
人体描写を学び始めて3ヶ月目にして突如悟りを開いたかのような安寧とした気持ちに満たされた私のこれまでのあゆみはこちら。
人体描写の勉強をしようと思ったきっかけ
勉強を始める前に自分の実力を確認した話
1〜2ヶ月目の学習内容
3ヶ月目でカラー創作絵を描いた話
今回は4ヶ月目に入り、新しい学習法に取り組みます。
4ヶ月目:ポーズカタログ集で学ぶ
学習によって知識はメキメキ増加し、その効果を途中途中で確認する事で自らを鼓舞しながら進んできてはいました。
それでもやはり実践的な知識が乏しく、何も見ずに満足な人体が描けるとは思えませんでした。
例えば、数学の公式や理屈を授業で習ってわかった気になっても練習問題を解いてみて、学んだ知識をどこでどう使うか、実践練習をしなければテストで点数は取れない。
「わかる」と「できる」は違うことは学生の時からわかっていました。
それでもやりたくないことはやらない、それが人間というものです。
物理のテストで18点を取った時に理系への道はアッサリ諦めました。
しかし、絵に関しては自分がやりたいと思ったので0点からでも諦めずにやることにしました。
そこで自分の好きな作家の絵や推しの写真などをたくさん模写しようと思っても、いちいち資料を探すのが面倒でしたし、好きなものを描きたいというより、体全体のバランスや、立った時、座った時、手足は胴体はどういう角度でどう見えるのかを学び、脳と体に叩き込むだけの数をこなす必要があると思いました。
そこで見つけた本がこちら。
男女3人の下着姿や着衣の全身写真が約800ポーズ収められていました。
ファッションモデルが服を見せる時のポーズではなく、普通に人が立っている時、座っている時の全身が写っています。
実際絵に描くときは上半身だけでも、背景や他の人物とパースを合わせるときは全身がどう収まっているかある程度気にする必要があるし、コマの外に肘が出ていて前腕だけ描きたい時でも肩から腕全体の角度がわからなければ不自然になってしまい、手を抜こうと思ってやっていることなのにそれすらできず、いちいち落ち込む原因にもなっていました。
下着姿は筋肉や骨までわかるので今までの勉強の復習になりますし、着衣の写真は服のシワの勉強になります。
これをできるだけ数多く模写することにしました。
最初は一枚描くのに1時間半くらいかかりました。
2時間かかることもありました。
体の大まかな形を捉えるのにも、そこから正しい線を見極めるにも時間がかかり、1時間半から2時間かけて1つのモチーフにこだわるのは結構しんどい。
そこで大まかな形を短時間で正確に捉えられるようになることを目的に、練習にクロッキーを取り入れることにしました。
1ポーズ10分で6ポーズ、計およそ1時間で描くのをウオーミングアップとし、その中から数ポーズ清書して正しい形を最小限の線で描けるよう意識して取り組みました。
クロッキーをする時、このアプリが便利でした。
準備時間、ワークアウト時間、休憩時間、セット数が設定できるので、10分やって1分休憩中に次に描く写真を決めて…というのを6セット設定してやりました。
筋トレみたいで楽しかったです。
実際集中するので終わる頃には汗だくということもありました。
その合間に、かの有名な「ソッカの美術解剖学ノート」も読みました。
図書館で借りようと思ったら貸出中だったので予約していて、借りられるようになるまで2ヶ月かかりました。
そのくらい人気のある本です。
Amazonレビューでも高評価です。
でもこれ、653ページもあり、そのほとんどが解説(文章)です。
実際の人体解剖図より解説の方が多く、文章を読むのにもとても時間がかかります。
すごくわかりやすく丁寧に、とっつきやすい文章で書かれているので読みやすいですし、内容も濃く、著者の絵もとても魅力的なのでいい本だと思います。
体の各部位、筋肉や骨の解説にとどまらず「なぜこの骨や筋肉はそういう形になっているのか」という原理が説明されていたり、他の動物との比較などもあり、大変面白く参考になりました。
高評価も納得です。
もし、私が漫画素材工房さんと「スカルプターのための美術解剖学」を先に読んでいなければ「これはすごい!これで勉強しよう!」と思っていたはずですが、2つを先に知ってしまったので、その2つで十分だったなと思いました。
クロッキーをしだして、初めてクロッキーをした小学校の図工の授業を思い出しました。
その時の先生が子供にクロッキーを描かせるのが好きな人で、勢いよく、大げさに描けば描くほど褒められたので、先生に褒められるように描いていた覚えがあります。
通知表は5段階評価でずっと5でした。
「スクールオブロック」のジャック・ブラックにそっくりだった杉谷先生、お元気でしょうか。
そんな邪念は地元に捨ててきました。
今は誰かに褒められ、評価されるために描くんじゃないんです。
自分が描きたいものが描けるようになりたいから描くのです。
その目的に向かって邁進するのみ。
ひたすら描いて、
描いて、
描きまくりました。
私の好きなまんきつさんという方の漫画に「湯遊ワンダーランド」というのがあります。
このなかでまんきつさんの弟さんが「サウナとヨガで脳と体をチューニングしておけ」とおっしゃっています。
私のクロッキーと模写はまさに「脳と体のチューニング」でした。
たくさんの人体に触れ、頭の中のイメージをはっきりさせる。
それを出力する指先の感覚も脳のイメージに合わせ、美しく正しい線を一発で描く。
失敗するとリカバリーが大変なアナログ漫画を描いている方はその訓練を日々重ねているからか、アナログ漫画の原画は息を飲む美しさです。
脳内イメージも指先の感覚もモヤモヤのガタガタな私がcommand+zでいくらでも描き直せるデジタル環境で描いているのは甘やかし以外の何物でもないと自覚しつつ、結局私が最終的に漫画を描くのはデジタル環境なので「デジタル環境でどうすれば早く必要最低限の絵が描けるか」を念頭において、随時いろんなツールを試しながら時間短縮を狙っていきたいと考えたことにして、文明の利器による利便性を享受することを正当化しました。
よってここからは
- 今まで学んだことが理解できているかの確認
- 様々な角度から見た体の各部位がどんな形に見えるかの確認
- デジタル環境で見栄えのする絵を最速で描くために、どこでつまづくかを洗い出し、その都度いいツールや方法がないか調べる
- 線をたくさん引いてごまかさず、一発で美しい線を引くことを意識
- 影やシワなどを効率よく確かに表現する方法を探る
以上を目的としてとりあえず1ヶ月やってみて、どんな成果が得られるかみてみることにしました。
ちなみに私がまんきつさんを知ったのは2012年に始められたブログを読んだことがきっかけで、インターネット黎明期からテキストサイトを読み続けてきた私が、その傑出した天才的な面白さに腰を抜かしたブログ(当時のサイトからはお引越しされたようです)のリンクを貼っておきますので刮目して見よ。
人体の写真を見ながらの模写は、以前やった人体標本模型のような筋肉丸出しの人体模写とは明らかに違っていました。
「人間の体って美しくできてるな〜」と常に感じていました。
モデルの顔がいいとか、スタイルがいいとかそういうことではなく、人が作る体の線や立体がとても美しく感じられて仕方ありませんでした。
なんでこんなにうまくできているんだろう。
この手足のバランスはどうだ!
胴体のひねりから生まれる曲線の美しさよ!
人類を創造した神がいるなら「人間をこんなに美しく作ってくれてありがとうございます」と感謝したい気持ちでいっぱいでした。
太古の昔から人は人をモチーフとして多くの芸術を残してきました。
わかる、わかるよ、その気持ち。
人体ってすごいもんね、美しいもんね!
と、いにしえの芸術家たちと分かち合いたい気持ちにもなりました。
やっぱり人体を描けるようになりたい!とルネッサンスな情熱が心に燃えたぎっていたのもつかの間、2週間が過ぎた頃、急に描けなくなってしまいます。
(6)につづきます。
次で終わります。
人体を描けるようになりたくて4ヶ月間勉強した話(4)
知識ゼロから出発して2ヶ月、これまで絵を描くために払ってきた犠牲の多さに呆然とした私。
前回までの記事はこちら。
人体描写の勉強をしようと思ったきっかけ
勉強を始める前に自分の実力を確認した話
1、2ヶ月目の学習内容
今回は3ヶ月目です。
3ヶ月目:創作カラー絵を描いてみる
呆然と立ちすくんでいても絵は描けるようにならないのはこの5年で身に沁みていたので、戦没者の御霊を弔いつつ粛々と学習に勤しみました。
「スカルプターのための美術解剖学」も一通り必要と思われることはなぞったところで、ちょっと実践的なことをやってみたいという気持ちになってきました。
人体の知識を得たところで、それを絵に落とし込めなければだたの人体に詳しい人になるだけです。
目的はあくまで「人体が描けるようになる」ことです。
魅力的な人体とは、絵とはどういうものか研究するためにまた本を借りてきました。
私はBUCK-TICKを、漫画を描きたいだけなので、正直かわいい女の子とか萌え絵などは実際自分が描きたいモチーフではありません。
しかし、それらの絵はたくさんの技術や工夫、人を惹きつける魅力が詰まっていることはわかるので、学べるところは学びたいと思って読みました。
透明感を演出するために多くのレイヤーを使って色を重ねていく様は、ナチュラルさを演出するために様々な化粧品を使い手の込んだメイクをするメイク動画をみているようでした。
いずれこれらのノウハウを駆使してキラキラした魅力的な絵を描いてみたいと思い、ノートにメモしていたところ、一枚絵を描く機会が巡ってきました。
巡ってきたというか、自らその機会を作りました。
いわゆる自作自演です。
7月半ばにネット麻雀大会を開き、その優勝賞品として優勝者の希望に沿った絵を私が描いて進呈するという、父の日に肩たたき券をプレゼントする子供のようなイベントを自ら設定しました。
そういうのは恋人、親族というような親密な間柄でのみ成立するというのは既成概念としておいといて、そこを平然と大胆かつ図々しく乗り越えていくのが私の鈍感力の真骨頂と言えるでしょう。
初めて主催した大会という事もあり、あまりにも見ず知らずの猛者たちが攻め込んできても対応できる自信がなかったので、参加者は大会告知前までに私のTwitterアカウントをフォローしてくださっている方限定としました。
結果、参加者はほぼオフ会等で会ったことがあったり、毎週一緒に麻雀していた旧知の方々となり、事前に予測していた心配は杞憂に終わりました。
そんな中優勝をもぎ取っていったのはこの大会を通じて初めて話した方でした。
この方がとにかく愉快な方で、彼が指定してきた条件もとてもユニークなものでした。
「エドモンド本田(ストリートファイター)と本田未央(アイドルマスター)と酒場のオヤジ(ハースストーン)が雀魂(大会で使用したネット麻雀ゲーム)の待機画面のように雀卓を囲んでいる、Twitterのヘッダーサイズの絵が欲しい」
その条件で描き上げた絵がこちら。
こういった自由な発想、好きなものを形にできるのが絵のいいところです。
私には思いつかない彼の世界を私なりに表現するために、今自分にできる全てを注ぎ込んで精一杯描こうと思って取り組みました。
借りてきた本のようなキラキラ感、透明感には程遠い仕上がりにしかなりませんでした。
着色は着色で必要とされる専門的知識があり、絵の世界は本当に奥が深いと思います。
それはそれで追々勉強していくことにして、今はこれが自分の限界ですと思いながら提出しました。
優勝者の方も本心はどうかわかりませんが、表面上大変喜んでくださったので、これでよかったことにしました。
この絵を描いている時、この2ヶ月間勉強してきたことは無駄ではなかったと感じていました。
描き上げるのに1週間以上かかりましたし、そんなにすんなりスラスラ描けたわけではありません。
それでも今まで人体が描けずに感じていたストレスは何分の1にも軽減されていました。
「この人はこういう角度で描きたい。こういう姿勢を取らせたい」と思った時にそれなりに描けた感じがしました。
この時「知識を得ると、紙(画面)の上で自由になれる」と感じました。
今まで描きたいものが描けないのが強いストレスで、絵が好きで、描きたいのに「もう描けない」と何度も思ってきました。
描きたいものがあるのに描き方がわからない。
目的地がわかっているのに行き方がわからない。
ならば描き方を、行き方を知ればいいのです。
今までは徒歩で行くことしかできず、目的地への道もよくわからなかった場所に、鉄道が走っていることを知り、切符の買い方がわかればとても楽に早くつけるのです。
人体の知識を得るということは、目的地へ早く楽につくための手段を1つ得ることなのだと感じました。
もっと自由になりたい。
もっと早く、遠くへ行きたい。
今は各駅停車にしか乗れないけど、いつか飛行機で地球の裏側まで行きたい。
なんなら前澤さんと宇宙へも飛び出したい。
そんな気持ちになれるほど、私の気持ちは晴れ晴れとしていました。
「もっと描きたい」
そこにはもう戦没者の影はありませんでした。
屍でいっぱいだった丘にはたくさんの草花が芽吹いていました。
(5)に続きます。
人体を描けるようになりたくて4ヶ月間勉強した話(3)
自分の人体描写知識はゼロであると認識した私は、新しいパンツを履いた元日の朝のような爽やかな気持ちで一から勉強することにしました。
前回の記事はこちら。
その前はこちら。
今回は1ヶ月目と2ヶ月目にどんな資料をつかってどう学んでいったかについてです。
1ヶ月目:漫画素材工房さんで学ぶ
BUCK-TICKレポ漫画を描く資料を探している時に、漫画素材工房さんが制作された人体の描き方に関する画像をよく目にしていました。
とてもわかりやすく効率的に学べそうだとその時から目をつけていました。
実はこれをみつけたから「人体を一から勉強してみよう」という気持ちになったと言っても過言ではありません。
今まで何か良い教則本はないかな〜とAmazon等で探してみたことはありました。
しかし値段が高かったり、中身が自分の学びたい事と合っているか実際見てみないとわからないと思ってしまい購入には至りませんでした。
漫画素材工房さんは、pixivFANBOXで月額料金を払えばランクに応じていろんな資料を見ることができます。
私が見たいと思った中級者プランは月額610円という安さであったことも、モチベーションの後押しとなりました。
無料で公開されているところもあります。
ここだけ見ても超絶参考になることは明白です。
月額610円の部分だけでも人体全部の構造を一通り見られるので、課金して読むことを強くオススメします。
漫画素材工房さんのいいところは、解剖学の知識を絵を描くにあたってどう落とし込むかを解説してあるところです。
それを「美術解剖学」というのだということも、恥ずかしながら初めて知りました。
「人体は描けなくてもいい」と鎌倉大仏が如く不動の姿勢に至った私にも、建立前の時点では「やっぱ人体描きたいよな〜」とちょっとだけ腰を浮かしてみたことは何度かありました。
ある時は「人体模型のように筋肉や腱が丸見えになった人体がポーズをとっている画像を数分で模写するのを繰り返す」というトレーニング的なことをしてみたりもしました。
いわゆる3分間ドローイングというやつです。
何回かやってみたところ、いまいち身になっている実感がなく継続できませんでした。
筋肉の名称やつながりがわからない状態でただ形を描いてもザルに水をそそいでいるような感じで、自分の中に残るような情報を得られている実感が湧かなかったのと、単に筋肉むき出しの人体模型を見続けるのが気乗りしなかったというのが挫折の理由に挙げられます。
それが漫画素材工房さんでは骨や筋肉の名称とそのつながり、イラスト風の簡略化した絵にした時どこを意識してどう描けばそれらしく見えるかが詳しく書かれており「私が求めていたのはこれだ!」と思い、夢中になりました。
とてもわかりやすく書かれているのに、私の知識と理解力が想像を絶する脆弱さだったため、ネットで各部位の漢字の読み方や漫画素材工房さんの解説だけではわからない部分を調べながら模写し、自分のわかりやすいようにまとめていったせいで、全てのパーツを一通りなぞるのに「1ヶ月目」と表題した割に、実際には1ヶ月以上かかりました。
こんな感じでまとめていきました。
1ヶ月が経過した時、腰から下はまだちゃんと学んでない状態にもかかわらず、どのくらい効果が出たか知りたくて興味本位で最初に描いたモチーフをもう一度描いてみました。
まだまだ下手くそですが「ちゃんと前に進んでるな」という実感が得られました。
この方向で間違いない、自信を持ってやっていこうと気持ちを新たにしました。
2ヶ月目:美術解剖学の本で学ぶ
「美術解剖学」という新しい言葉を知ったので、図書館で「美術解剖学」で検索してヒットした本を借りてみました。
「スカルプター」というのは「彫刻家」のことらしいです。
内容的には漫画素材工房さんと被っているところが多かったです。
漫画素材工房さんがご自身で描かれたイラストで解説されているのに対して、こちらの本は実際の写真や写実的なイラストがほとんどで、解説もあまりありません。
それでも「痒い所に手が届く」とでも言いましょうか、骨と筋肉の名称、繋がりはもちろん余すところなく書かれていますし、「あー、ここの筋肉が、骨がこうなってるからこういう形に見えるのか〜」というのがよくわかる写真や図説がもりだくさんでめちゃくちゃ参考になります。
こちらもひたすら書いてある内容を理解するため模写したり、自分なりにまとめたりしました。
人体を描いていると骨や筋肉、脂肪によっていろんな部分がデコボコしていて、それによってできる影をどこに描いたらいいかいつも全然わからず常に迷っていたので、それらを意識しながら模写したりもしました。
ここまでやってみて、本当に私は何も知らなかったのだと痛感していました。
知らずに描けるわけねーわなと、当たり前のことを理解しました。
敵がどんな戦力でどんな場所でどんな陣形を組んでいるか知らないで竹槍で突っ込んでいったらそりゃ玉砕するよなと思いました。
私はいままでそれを圧倒的なマンパワーでなんとかしてきました。
敵陣にいくつか旗を立ててはきましたが、後ろは死屍累々でした。
もっと早くに気づいていれば…と戦没者に手を合わせるような気持ちで日々勉強していました。
図書館で本を探した時に、他にも面白そうなハウツー本を見かけたの借りて読み、実際やってみたりしました。
この本を読んで加工してみた写真がこちら。
本で紹介されていた写真を絵画風に変換するアプリはmacでは上手く動かなかったのでCLIP STUDIOを買う前に使っていたGIMPを久しぶりに引っ張り出してはみたものの、さすがに古かったので最新版をダウンロードして使いました。
GIMPは絵も描けるし、画像の加工もできる無料ソフトです。
以前は絵を描くのに使っていただけだったので、今回写真を一発で絵画風に加工できる機能があることを初めて知り、しかも結構いい感じになることに驚きました。
それが無料ってすごい。
ここに描いても違和感ないような人体が描けるようになったら楽しいだろうな〜それができたらあんな絵やこんな絵も描いてみたいな〜などと夢が広がりました。
1ヶ月半ほど骨と筋肉のことばかり考えていたので、いい息抜きになりました。
久しぶりにGIMPに触れて、5年前に初めてGIMPでパソコンで絵を描いた時のことを思い出しました。
あの時は液タブもなく、マウスで描いたり、ペンタブでは綺麗な線が描けなくて四苦八苦していたなぁなどと感慨深く思ったりしました。
あれから5年。
美術専門学校のデッサン教室に通ってみたり、漫画の背景パースを学ぶべく講座に通ってみたりとその時その時でできること、やりたいことを見つけながら絵が上手くなりたい一心で行動してきたこともじんわりと思いだされます。
あの時があったから今、ここに思い至れたと思えば決して無駄ではなかったとも思えます。
とはいえさすがに5年は長すぎんだろうがよと、屍の山を眺めながら一人呆然と立ちすくむのです。
(4)に続きます。
人体を描けるようになりたくて4ヶ月間勉強した話(2)
前回は「人体など描けなくても漫画は描ける」と息巻いていた私が、人体の描き方を真剣に勉強しようと思ったきっかけを書きました。
その記事がこちら。
今回からは方法論です。
どうやって人体の描き方を学ぶか
自分の実力を把握する
さあ、いっちょやってみっか!と脳内のやる気が野沢雅子さんの声で喋り出した時に、私がまず最初にやったことは
「4ヶ月で16Pの漫画を描き、模写ならある程度できる自分が今、資料なしでどの程度人体が描けるのか」
を把握することでした。
その時描いた絵がこちら。
今日び小学生でももっと上手く描けますよ。
絵柄も古いし、自分が小・中学生だった頃に描いてた絵から全く進歩が見られません。
描いてる最中ずっと「こりゃあかんわ」と思っていました。
「こんな実力でよくBUCK-TICKメンバーを描こうと思ったな」と思いました。
と同時に「これでよく今までやってきたな」とも思いました。
これはちょっとした自慢でもあるのですが、2019年にハースストーンというゲームを作っているBlizzardという会社主催の「ハースストーンイラストコンテスト」というのがあり、そこで入賞したことがありました。
その時の絵がこちら。
入賞賞品がiPadminiとApple Pencilだったのと、当時絵のことに関して思うことが多々あり、締め切りまでの18日間「今までの自分史上一番の絵を描いてやる」と鼻息荒く目を血走らせながら資料をあさり、何も知らない夫にいきなり「ちょっとパンツ一枚になって右腕挙げてもらえない?左腕は腰のあたりで…」などと言い出して困惑されたり、グリザイユ画法やエフェクトのつけ方について調べ、それでも描けなくて辛くてマジ泣きしながら描いた絵が自分が愛して止まないゲームの会社に認められ、高価な賞品をもらえたことは大きな自信になりましたし、入賞を知らせる連絡が来たときは咆哮しながら泣き崩れるほど嬉しかったです。
嬉し泣きするほどの達成感を味わったその時も、16Pに4ヶ月かかった時と同じく「もう描けない」とも思いました。
しんどすぎました。
その後、現在に至るまで人体をモチーフとした創作のカラー絵を描くことはほとんどありませんでした。
それでもまあ、いろんな技法は覚えたし、人体もいくぶん描けるようになったような気もするし、と思っていましたが実際はこれです。
2回も載せる絵ではないことは重々承知しています。
でも、実際このザマなのです。
私は何もわかっていなかったのです。
5年間絵を描いてきて、一瞬思うような絵が描けるようになったかも?と思った時もありました。
しかしそのほとんどが資料を見ての模写、いわば右から左へ写すだけ、それでも膨大な時間と気力を使う必要があるにもかかわらず、その後にはちょっとした知識と燃えカスのような自分以外ほとんど何も残っていない。
なんでしょう、徹夜で机に向かってはいるけど問題集の答えを書き写しているだけで理屈は全く理解していないからテストは0点みたいな感じですかね。
その事実を理解し、問題に向き合うのに5年かかりました。
何事にも自分が納得するまで大変時間がかかる頭の固いところが実質的な私の頭の悪さだなと、日常的に自己嫌悪に陥ります。
しかしよく考えてみたら今までの人生一事が万事こういう感じだったなと思い起こされます。
もうここまで来たら自分はこういう人間だから仕方ないと受け入れるしかありません。
自分だけは自分と一生付き合っていかねばならないのですから、できるだけ自分がつきあっていきたい人間になりたいと思っています。
今の自分はこと人体に関しては0点だというのがよくわかったので、これからやっていくしかないと腹をくくりました。
だからあえて0点の絵を2回載せました。
もう怖いものなどないのです。
(3)に続きます。