人体を描けるようになりたくて4ヶ月間勉強した話(1)
私は趣味で漫画を描いています。
漫画を描くにあたって人体を描くことが避けられなくなってきたので、一念発起して人体の描き方を4ヶ月間、独学で勉強しました。
そのきっかけと方法、結果をまとめておきます。
誰かのお役に立てれば幸いです。
なぜ今、人体を描けるようになりたいと思ったのか
人体など描けなくてもいいと思っていた
私は5年ほど前から絵を描き始め、2018年に初めて漫画を描いてTwitterに発表しました。
いちばん最初に描いた漫画がこちら。
先日行ったP2Gのイベントでのことを漫画にしました。みなさんの顔が似てなくてすみません。 pic.twitter.com/VnW02wv9Vp
— 山咲みどり (@tokumorimix) 2018年3月30日
私の漫画は完全な創作ではなく、事実を元にしたレポ漫画です。
なので一番出てくる自分のアバターは頭が大きく、寸胴で手足は短く指もないウサギの設定しました。
描くのが楽だからです。
最初の漫画でも人物はできるだけバストアップだけにして、難しい構図はなし、背景もほとんど描いてありません。
これでも完成まで1ヶ月かかりました。
人体は骨と複雑に絡み合った筋肉でできており、パーツが多く可動域も広く、見る角度によって全く形が違うのでとにかく難しい。
人体を避けても描けるネタはそれなりにあったし、なんなら他の登場人物も人間ではなく適当な動物にしてしまっても差し支えなかったので、人体をあまり描かずのらりくらりやってきました。
登場人物を全員動物にしてやり過ごした例。
歯が一本だけ白い話。1/4 pic.twitter.com/S9VULCRQ7j
— 山咲みどり (@tokumorimix) 2020年5月25日
人体を描くのがうまい絵描きさんの絵を見ては「いいなぁ、上手だな」と思うことは多々あり「自分も描けるようになりたいな〜」とはうっすら思っていても、彼らのようなレベルの絵描きになるには途方もない練習時間が必要だとわかっていたので、モチベーションよりはるかに腰の方が重く、布団に寝転がってスマホでお絵描き技術関係の記事を読むのが関の山でした。
それに「自分が描きたいものは人体が描けなくても描ける」というのも数作漫画を描いてみてわかっていたし、「このまま必要に応じて調べながら一枚絵でも漫画でも何作か描いていればいずれ自然と描けるようになるかもしれない」と根拠のない淡い期待を抱いていました。
それが通用しない時がとうとう来ました。
BUCK-TICKというアーティストと出会ってしまったのです。
人体を描きたいという強い思い
BUCK-TICKの魅力を書き出すと1つのエピソードで軽く2万字を越えると思うので割愛します。
そんな彼らの作る作品は曲にしろミュージックビデオにしろアーティスト写真にしろ何もかもがとても素晴らしく、心揺さぶられることだけは明記しておきます。
何も言わず、この動画をみてください。
とはいえ、私はこれをみて心臓を捧げることになりましたので実は大変危険な動画です。
その経緯を描いたまんががこちら。
今年の5月に突然BUCK-TICKというバンドにハマった時のことを漫画にしました。公式チャンネルでMVとかたくさん観れるので興味があったらみてみてください(沼への入り口)⇨https://t.co/BPmh3cSWc1#BUCKTICK pic.twitter.com/NVtLbyCCU8
— 山咲みどり (@tokumorimix) 2020年8月15日
警告はしました。
あとは自己責任でどうぞ。
彼らの作品に向かう姿勢、ライブでの演出、デビュー30周年を超えてなお輝くルックスを維持する努力、ファンへの対応、どれをとっても尊敬できます。
彼らの作品に触れ、ライブやテレビ、雑誌での活動を目にするたびに感動が生まれます。
その気持ちを漫画にして残したい。
そう思った時にBUCK-TICKメンバーを描くことは避けられないし、ましてや簡略化して他の動物にするわけにはいかず、何よりそんなことをする自分が許せない。
彼らはあんなに素晴らしいものを私たちに提供してくれているのに、自分は手を抜くのか?
ありがてえ、ありがてえと恩恵を享受するだけで終わっていいのか?
では自分にできることはなんなのか?と問うた時に
「彼らの活動に恥ずかしくないものを自分も作りたい」
というフォントを煽ってしまう程の熱い思いがフツフツと湧いてきました。
クオリティはどうであれ、せめて今できる精一杯のものを作ろう。
じゃあやってみろよ、やってやろうじゃねえかと一人二役、売り言葉に買い言葉で精魂込めて描いた作品がこちら。
2020年の年末に初めて行ったBUCK-TICKのライブが素晴らしかったので漫画にしました。(1/4) pic.twitter.com/OIZmCQc6V3
— 山咲みどり (@tokumorimix) 2021年4月28日
たった16Pの漫画を描くのに要した時間はなんと4ヶ月。
年明けからネームを切り始め、発表できたのは4月末。
その間、結構、いやかなり真面目に取り組みました。
それでも1日1コマも描けないことがほとんどで、ここでいう描けないというのは描く時間がなくて描けないのではなく、毎日数時間机に向かいペンを走らせているのに「描けない」のです。
何を言っているのかわからないかもしれませんが「描いている」のに「描けない」のです。
特に描けなかったのはもちろん人体。
どのくらい描けないかというと、このくらい。
画力がゴミすぎてつらい。 pic.twitter.com/AHY0Z8tX6j
— 山咲みどり (@tokumorimix) 2021年1月28日
下書きの下書き段階ではありますが、ひどすぎる。
全然思うように描けない。
思うようにといっても、漠然と「キラキラかっこいい感じ」というのがあるだけで、具体的に足がどうとか手がどうとか全く具体的にイメージでません。
ですから当然資料を見ながら描きます。
それでも、それなのに、もう、びっくりするほど描けない。
そんな底辺すぎる画力しかないにも関わらず、どうしても想いを形にしたくて、必死に資料を見て、描き方を、人体の構造を調べてヘトヘトになりながら描き終えました。
先ほどの下書きは最終的にこうなりました。
BUCK-TICKのボーカル櫻井敦司さんはよくステージで二の腕を出します。
その筋肉がまた惚れ惚れするほど美しいのです。
彼の美貌は天から授かったものとその後の人格形成とメンテナンスによって維持され…
筋肉を作るのは日々の鍛錬…
それらを余すところなく…
…
…
危うく2万字書き始めるところでしたのでやめます。
結局、今できる自分の全てを注ぎ込んでゴミのような下書きをある程度納得できる水準まで高めることはできました。
しかしその作業量は自分のスペックを大幅に超えていたため、幼い頃から我慢強さと根気には定評のある私でもさすがに「もう描けない」と思いました。
たった16Pに4ヶ月もかかる画力では文章にしたら1エピ2万字超のBUCK-TICKの良さみを表現することはできない。
ちゃんと人体の構造と描き方について勉強しなければ。
推しへの想いの強さが腰の重さを超えた年貢の納め時でした。
(2)につづきます。