人体を描けるようになりたくて4ヶ月間勉強した話(6)
戦没者の次はいにしえの芸術家たちと交信を始めた私のこれまではこちら。
人体描写の勉強をしようと思ったきっかけ
勉強を始める前に自分の実力を確認した話
1〜2ヶ月目の学習内容
3ヶ月目でカラー創作絵を描いた話
4ヶ月目にクロッキーと人体模写をしまくった話
人体描写学習は4ヶ月目にしてさらに勢いづき、猪突猛進、獣の呼吸で新しい練習方法を試して2週間が過ぎたころ、急に描けなくなってしまいます。
草花で埋め尽くされた草原で爽やかな風に吹かれたのは幻覚か、それとも冥土の入り口か。
そしていよいよ4ヶ月間の成果が明らかに。
1ヶ月経たずに訪れた壁
クロッキーと清書の反復練習を始めて2週間くらいは「これは伸びる!」という確信を持ってバリバリ取り組み、実際に点でしかなかった知識が線になって繋がる感覚があり、やりがいを感じていました。
それが3週間目に差し掛かる頃「ん?」となりました。
最初は全くできなかったことが徐々にできるようになっていた感覚があったのに、今度はできないことが気になり始めました。
「この角度の体だと、奥行きが捉えられなくて描けない」
「腰の角度と足の付け根がどうなっているのかわからなくて描けない」
「えー、全然できないこと、わからないことばっかりじゃん!」
描き続けていれば最初は1時間以上かかっていた清書が30分くらいでできるようになるんじゃないか、1ヶ月もやればどんなポーズでも資料見ずに描けるようになるんじゃないかと夢見ていたのに、全くタイムは縮まらず、それどころかさらに時間がかかるようになってしまいました。
「やっぱりできない。わからない。私は頭が悪くて能力の低い人間なんだ。だからできるようにはならない」
そうやって落ち込み、やれ腰が痛い、頭が痛いと言って布団にダイブ、ゲームを起動する一連の流れ。
いっっっっっっっつもそう。
ちょっとつまづくとすぐ「自分の能力が低いから」「才能がないから」「頭が悪いから」と自分を卑下して逃げようとする。
しかしこれ、能力の低い自分を肯定しているようでいるようでいて、実は自分の能力を高く見積もっているんです。
「自分は能力が高く、ちょっとやればすぐできる」と心のどこかで思っている、もしくはそうありたいと思っているのに、やってみたらできない。
だから「自分は能力が低い」って落ち込むんです。
できないのは「能力が低いから」じゃなくて「知識が足りてないから」なのに、自分の能力のせいにするのはそこを過信、理想化しているからです。
だから最初から言ってるじゃないですか。
ちょっとやったくらいでできることじゃないんだって。
できる人もいるかもだけど、私はそういう人間じゃないんだって。
能力がない、才能がない、頭が悪い、それはそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
ただ、できるようになるまで、理解するまでやってないことだけは確かで、やってないからできないのは当たり前なんです。
いい加減、気づけ。
脳内のミスター都市伝説、関暁夫さんが決め台詞を甘えた私に叩きつけます。
できない時はどうするんでしたっけ?
そうです、やり方を学べばいいのです。
すぐに漫画素材工房さんと「スカルプターのための美術解剖学」を読み返しました。
すると、以前読んだ時は読み飛ばしていたところに解決の糸口がありました。
読み飛ばしていたというか、わかった気になっていた部分が実際は理解できておらず、疑問にぶち当たって初めてその部分を理解できたという感じです。
もう一度曖昧だった部分を模写し直したり、体のパーツそれぞれを立体として捉えられるよう構造線を意識して描いたりしてみました。
するとまた「これは伸びる!」という感覚がありました。
おやおや、またいい気になっていますね?
今度は脳内のフリーザ様が囁いてきます。
おそらく今後はこの「できる(いい気になる)、できない(落ち込む)、資料に戻る(解決)」の繰り返しだと思います。
できることを確認して喜ぶのはいいとしても、できないことを認識したときに落ち込むのは時間の無駄で、むしろ問題点を認識できるほど成長したと思って次の段階に進む1つの目安とするのが精神衛生上良いと思われます。
4ヶ月間の成果とこれから
4ヶ月が経過して、最初に実力を測った時のモチーフをもう一度描いてみようと思った時、とても不安になりました。
「4ヶ月もかけてやってきたのに何も身についていなかったらどうしよう」
「模写ではそれなりに描けるようになったけど、何も資料がなかったらやっぱり描けないんじゃないか」
そんな風に考えてしまい、描くのをためらいました。
でも、そこで止まっていては結局前と同じじゃないですか。
今どのくらい描けるのか。
描けないのはどうしてか。
原因がわかったらもう一度資料に戻る。
そうすればいいだけのことです。
勇気を出して描いてみました。
めちゃ変わっとるやん。
ゼロ地点、1ヶ月後、4ヶ月後で並べてみました。
見たらわかる、違うやつやん!(CV:宮川大輔)
違うポーズも描いてみました。
人が…動いている…
基準となるモチーフを描いてみて
「ここまだよくわかんないな〜」
と思うところはたくさんありました。
でも、以前はまっすぐ立たせる事すらできなかった人体を動かすことができたのはとても嬉しかったです。
ちゃんと前進しとるやん。自分。
ここ最近の一番大きな変化といえば、体の各部位を立体として、どの面がどこを向いているかを捉えられるようになったことです。
以前は輪郭を描いてなんか違う、なんか違うと延々修正していた部分を、最近では立体として考えることで楽に違和感を修正できることに気づきました。
また、そう捉えることで人体に奥行きを出せるようになったり、顔のパーツの配置も以前より違和感少なくできるようになってきました。
今は着衣のモデルを模写しています。
服のシワが体に沿ってできているという当たり前のことが、中の体を勉強することによって割とスムーズに理解できてる感覚があります。
やればやるほど知識が増える感じもありますので、これからもしばらくはクロッキーと清書、そのとき感じた疑問点の解消を繰り返し続けていきたいと思います。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
最初に「誰かのお役に立てれば幸いです」と書きました。
まぁそれは建前というか枕詞というか、誰かのためというよりむしろ自分のためにこの一連の記事を書いたというのが一番かもしれません。
誰かのために書くのなら、もっと簡潔に書けばいいのにこれだけ書きたいことを思いっきり書いて引き伸ばしたのは自己満足以外の何物でもありません。
4ヶ月間頑張ったことを、その時考えたことを文章という形にして残しておきたかったんです。
それでもここで紹介したサイトや本、ツールが誰かのお役に立てたら、私がやってきたこと、勉強しながら考えたこと、感じたことが同じく絵を勉強している方、もっと絵が上手くなりたいと思っている方の力になれたら、そんな嬉しいことはありません。
最後に人体を学習する上で使ってよかったサイト、本などをもう一度ご紹介しておきます。
ちなみに、これらのサイトや本を見るだけでは私の経験上
絶対に絵は上手くなりません。
上手くなる人もいるかもしれませんが、それは一部のスタンド使いとかそういった特殊能力者だけです。
上手くなったような気になるかもしれません。
でもそれは
100%気のせいです。
必ず自分で描いてみてください。
<漫画素材工房さん>
財布の紐がダイヤモンドより硬い私が断言します。課金して損なし。人体の描き方に迷っている人は必ず購読すべし。
<スカルプターのための美術解剖学>
骨と筋肉を勉強したかったらこれ。迷ったらここに戻れ。
<だらっとしたポーズカタログ>
自然なポーズの人体を全身模写するならこれ。モデルも嫌味がなくて良い。部屋の中での写真はもちろん、背景なし1ポーズでアイレベル水平、煽り、俯瞰でそれぞれ正面、斜め、後ろ等、様々な角度からの写真も収録されている。
<Timer Plus>
クロッキーをする時に便利なアプリ。準備時間、ワークアウト時間、休憩時間、セット数が設定できる。普通に筋トレにもいいと思う。
私がBUCK-TICKというバンドが好きな理由の1つに、それまでの良さを失わず、常に新しいことに挑戦し、最高を更新し続けているところが挙げられます。
30年以上音楽活動をしていればヒット曲も多々ありますし、ライブでそれをやっていればお客さんは喜ぶと思います。
でもBUCK-TICKはそうしません。
もちろん定番曲というのはありま…
コロナ禍の中で行われた無観客配信のうち…
…
…
また語り出すと長くなるのでやめます。
とにかく、そういうBUCK-TICKの良いところを見習って、私も常に自分の最高を更新し続けるような人生にしたいです。
新しい漫画や絵が描けたらTwitter(@tokumorimix)やpixiv(山咲みどり)にUPします。
お時間あればこれからの私の地味な成長ぶりを「いい気になってたあの人どうしてるかな。息してるかな」程度の感覚でたまに覗いていただけると幸いです。
おわり
ちなみに「BUCK-TICKの良さを語ると2万字を超える」と第1話でしつこく書きました。
この「人体を描けるようになりたくて4ヶ月勉強した話」全6話合わせて17,000字くらいです。
BUCK-TICKの良さがどれほど多いか、その沼がどれほど深いか、お分りいただけるかと思います。