人体を描けるようになりたくて4ヶ月間勉強した話(3)
自分の人体描写知識はゼロであると認識した私は、新しいパンツを履いた元日の朝のような爽やかな気持ちで一から勉強することにしました。
前回の記事はこちら。
その前はこちら。
今回は1ヶ月目と2ヶ月目にどんな資料をつかってどう学んでいったかについてです。
1ヶ月目:漫画素材工房さんで学ぶ
BUCK-TICKレポ漫画を描く資料を探している時に、漫画素材工房さんが制作された人体の描き方に関する画像をよく目にしていました。
とてもわかりやすく効率的に学べそうだとその時から目をつけていました。
実はこれをみつけたから「人体を一から勉強してみよう」という気持ちになったと言っても過言ではありません。
今まで何か良い教則本はないかな〜とAmazon等で探してみたことはありました。
しかし値段が高かったり、中身が自分の学びたい事と合っているか実際見てみないとわからないと思ってしまい購入には至りませんでした。
漫画素材工房さんは、pixivFANBOXで月額料金を払えばランクに応じていろんな資料を見ることができます。
私が見たいと思った中級者プランは月額610円という安さであったことも、モチベーションの後押しとなりました。
無料で公開されているところもあります。
ここだけ見ても超絶参考になることは明白です。
月額610円の部分だけでも人体全部の構造を一通り見られるので、課金して読むことを強くオススメします。
漫画素材工房さんのいいところは、解剖学の知識を絵を描くにあたってどう落とし込むかを解説してあるところです。
それを「美術解剖学」というのだということも、恥ずかしながら初めて知りました。
「人体は描けなくてもいい」と鎌倉大仏が如く不動の姿勢に至った私にも、建立前の時点では「やっぱ人体描きたいよな〜」とちょっとだけ腰を浮かしてみたことは何度かありました。
ある時は「人体模型のように筋肉や腱が丸見えになった人体がポーズをとっている画像を数分で模写するのを繰り返す」というトレーニング的なことをしてみたりもしました。
いわゆる3分間ドローイングというやつです。
何回かやってみたところ、いまいち身になっている実感がなく継続できませんでした。
筋肉の名称やつながりがわからない状態でただ形を描いてもザルに水をそそいでいるような感じで、自分の中に残るような情報を得られている実感が湧かなかったのと、単に筋肉むき出しの人体模型を見続けるのが気乗りしなかったというのが挫折の理由に挙げられます。
それが漫画素材工房さんでは骨や筋肉の名称とそのつながり、イラスト風の簡略化した絵にした時どこを意識してどう描けばそれらしく見えるかが詳しく書かれており「私が求めていたのはこれだ!」と思い、夢中になりました。
とてもわかりやすく書かれているのに、私の知識と理解力が想像を絶する脆弱さだったため、ネットで各部位の漢字の読み方や漫画素材工房さんの解説だけではわからない部分を調べながら模写し、自分のわかりやすいようにまとめていったせいで、全てのパーツを一通りなぞるのに「1ヶ月目」と表題した割に、実際には1ヶ月以上かかりました。
こんな感じでまとめていきました。
1ヶ月が経過した時、腰から下はまだちゃんと学んでない状態にもかかわらず、どのくらい効果が出たか知りたくて興味本位で最初に描いたモチーフをもう一度描いてみました。
まだまだ下手くそですが「ちゃんと前に進んでるな」という実感が得られました。
この方向で間違いない、自信を持ってやっていこうと気持ちを新たにしました。
2ヶ月目:美術解剖学の本で学ぶ
「美術解剖学」という新しい言葉を知ったので、図書館で「美術解剖学」で検索してヒットした本を借りてみました。
「スカルプター」というのは「彫刻家」のことらしいです。
内容的には漫画素材工房さんと被っているところが多かったです。
漫画素材工房さんがご自身で描かれたイラストで解説されているのに対して、こちらの本は実際の写真や写実的なイラストがほとんどで、解説もあまりありません。
それでも「痒い所に手が届く」とでも言いましょうか、骨と筋肉の名称、繋がりはもちろん余すところなく書かれていますし、「あー、ここの筋肉が、骨がこうなってるからこういう形に見えるのか〜」というのがよくわかる写真や図説がもりだくさんでめちゃくちゃ参考になります。
こちらもひたすら書いてある内容を理解するため模写したり、自分なりにまとめたりしました。
人体を描いていると骨や筋肉、脂肪によっていろんな部分がデコボコしていて、それによってできる影をどこに描いたらいいかいつも全然わからず常に迷っていたので、それらを意識しながら模写したりもしました。
ここまでやってみて、本当に私は何も知らなかったのだと痛感していました。
知らずに描けるわけねーわなと、当たり前のことを理解しました。
敵がどんな戦力でどんな場所でどんな陣形を組んでいるか知らないで竹槍で突っ込んでいったらそりゃ玉砕するよなと思いました。
私はいままでそれを圧倒的なマンパワーでなんとかしてきました。
敵陣にいくつか旗を立ててはきましたが、後ろは死屍累々でした。
もっと早くに気づいていれば…と戦没者に手を合わせるような気持ちで日々勉強していました。
図書館で本を探した時に、他にも面白そうなハウツー本を見かけたの借りて読み、実際やってみたりしました。
この本を読んで加工してみた写真がこちら。
本で紹介されていた写真を絵画風に変換するアプリはmacでは上手く動かなかったのでCLIP STUDIOを買う前に使っていたGIMPを久しぶりに引っ張り出してはみたものの、さすがに古かったので最新版をダウンロードして使いました。
GIMPは絵も描けるし、画像の加工もできる無料ソフトです。
以前は絵を描くのに使っていただけだったので、今回写真を一発で絵画風に加工できる機能があることを初めて知り、しかも結構いい感じになることに驚きました。
それが無料ってすごい。
ここに描いても違和感ないような人体が描けるようになったら楽しいだろうな〜それができたらあんな絵やこんな絵も描いてみたいな〜などと夢が広がりました。
1ヶ月半ほど骨と筋肉のことばかり考えていたので、いい息抜きになりました。
久しぶりにGIMPに触れて、5年前に初めてGIMPでパソコンで絵を描いた時のことを思い出しました。
あの時は液タブもなく、マウスで描いたり、ペンタブでは綺麗な線が描けなくて四苦八苦していたなぁなどと感慨深く思ったりしました。
あれから5年。
美術専門学校のデッサン教室に通ってみたり、漫画の背景パースを学ぶべく講座に通ってみたりとその時その時でできること、やりたいことを見つけながら絵が上手くなりたい一心で行動してきたこともじんわりと思いだされます。
あの時があったから今、ここに思い至れたと思えば決して無駄ではなかったとも思えます。
とはいえさすがに5年は長すぎんだろうがよと、屍の山を眺めながら一人呆然と立ちすくむのです。
(4)に続きます。